CASE STUDY

早稲田大学ビジネススクール 様

決して学生たちの学びを止めないための
ハイフレックス授業

早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)菅野 寛教授 様

早稲田大学の経営大学院、早稲田大学ビジネススクールはビジネス社会において専門的能力と的確な判断力を備え、世界的視野で活躍できる高度専門職業人を育成することを目的とし、日本に限らず世界中から学生が集います。新型コロナウイルスの影響で、学生が一堂に会することは難しくなった中でも、決して学生たちの学びを止めることのない工夫をされていました。今回は、早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授でDX委員会にも所属されている、菅野 寛教授にお話を伺いしました。


菅野 寛教授

これからのビジネススクールの在り方などを協議する中で見えてきたのが、
ハイフレックス授業の重要性

早稲田大学ビジネススクール(以下WBS)では、新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに、2020年4月からZoomでのオンライン講義が開始されました。その後、2021年より大学が原則として対面での授業を始めました。しかし、収容人数の制限で全員が同じ教室に入ることができない、さらに未だに入国ができず自宅から参加をせざるを得ない留学生がいるなど、こういった学生たちのために対面とオンラインの混在である「ハイフレックス授業」が開始されました。また、同時に発足されたのがDX(デジタルトランスフォーメーション)委員会です。毎週集まって、これからのビジネススクールの在り方などを協議する中で見えてきたのが、ハイフレックス授業の重要性でした。そこで、必要に迫られて開始したハイフレックス授業の設備の見直しと強化を本格化させることになったのです。

学生がたくさん発言して、ディスカッションをすることがWBSの醍醐味

WBSは平均年齢30歳を超える社会人が集まっているビジネススクールです。さらに、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが、一方的に講義を聞くのではなく、たくさん発言をしてディスカッションをすることが醍醐味です。教員は、学生たちからどれだけアウトプットを引き出せるかが重要になります。これらを実現するには、よりクオリティの高い教育・設備が必要です。そのために、今までも他の大学院よりもチャレンジングな取り組みを先行して行ってきました。ハイフレックス授業においても、そこを実現させるための方法を意識しました。
まずは、教室とリモートを円滑につなぎ、コミュニケーションが取れること。Zoom専用のハードウェアを使うことによって、教室とリモートに一体感が生まれました。さらに、講義の録画や資料の共有等、教員自身のデバイスへの負担も軽減しました。


前方からの教室全体の様子(左) Zoom 専用のハードウェア(右)

次に、教室全体の音をリモート側に届けること。従来から教室に備わっているハンドマイク等を使用するだけでは、教室全体の音を拾うことができず、教員以外の発言者の音声がリモート側には一切届きませんでした。天井設置型のマイクを使うことで、そもそも教員がマイクを持つ必要がなくなり、さらに教室全体の音を高いクオリティでリモート側に届けることが可能になりました。


天井設置型マイクロフォン

最後に、教室にいる人とリモートの学生との視線を重視すること。今回新たに、教室後方に2枚のディスプレイを設置しました。Zoomでのギャラリービューやスピーカービューを表示させることで、教室にいる人とリモート参加の学生が視線を合わせながらディスカッションできるようになりました。あえて後方にディスプレイを設置したのは、リモートから参加した学生が発言している映像がスピーカービューに映し出され、教員や教室にいる学生たちが振り向き、視線が合う、これを実現させたかったからです。これは、ハーバードビジネススクールなどでも採用されている方法です。リモートで参加している学生は、自分が発言している時にみんなが注目してくれることで、自分も参加しているという安心感を得られます。


教室にいる人とリモート参加の学生の顔を見られるよう、後方に設置されたディスプレイ(左)
リモート参加の学生が教室全体の様子を見られるように設置されたカメラ(右)

学生を誰一人として取り残さない、空間の実現

これらを導入した馬蹄形教室は、教員が学生の顔を見ながら対話式の授業ができる、ビジネススクールでも定番の教室であり、この教室で学生を誰一人として取り残すことなく、自由にディスカッションできる空間を短期間で実現できたことは、大変嬉しいです。また、リモート参加の学生は自分の顔が常に教員に見えているので適度な緊張感を感じて参加できることも良かったと思います。


後方からの馬蹄教室の様子

人生100年時代と言われる現在、場所や環境を理由に学びをあきらめる必要はない

新型コロナウイルス感染症は、きっかけに過ぎません。人生100年時代と言われる現在、教育課程に満足して勉強を終了するのではなく、常に学び続けることはマストであると考えます。そのためにも、環境や時間を理由に学びをあきらめる必要がない、ハイフレックス授業はこれからの教育のスタンダードになるべきです。
さらに、昔は教室に集まってみんなでインプットをし、自宅に帰り復習をしながら個人でアウトプットをするという方法でした。しかし、ハイフレックス授業をすることでそれが反転し、講義までに各自でインプットをし、それをディスカッションしながらみんなで深めていくという反転授業が可能になりました。
我々教員は、対面とオンラインのそれぞれの良さを余すことなく活かしながらクオリティの高い教育を行える、学生たちはそれらを自分たちのライフスタイルに合わせて受講方法を選択できるようになった。これこそ、これからのビジネススクールの在り方に通ずるものがあると思います。

今までも、これからも先行して新しいことにチャレンジしていく

より良いハイフレックス授業の実現には、まだまだ改善の余地があります。学生だけではなく教員がリモートで参加して学生たちが教室から参加することや、グループディスカッションのグルーピングを、リモートと教室の学生を組み合わせて管理して自由に交流の場を広げる、さらにパネルディスカッションをハイフレックスで行うなど。また、よりダイナミックなディスカッションを実現させるためのコラボレーションツールを導入したいです。
今までもこれからも、よりクオリティの高い教育を提供するために、先行して新しいことにチャレンジをしていきたいと思います。

 

早稲田大学ビジネススクール

東京都新宿区西早稲田1-6-1 早稲田大学大学院経営管理研究科(早稲田キャンパス11号館3階)


RELATED PRODUCT